合間縫う腑に落ちない音楽

肩透かしのカタストロフィは続く

YouTubeにおける弦楽四重奏の扱いの現状

きのうは「クラシック音楽をカッコよく撮る」などとイキってしまったが、実は実態をよく把握していなかった。新しい市場を作るのだから、市場調査に振り回されてもしようがないのだが、やはり現状は知っておくべきだ。

ということで、YouTubeで「String Quartet」(弦楽四重奏)を検索し、視聴回数でソートしたところ、TOP10は次のとおりとなった(2018年4月22日現在)。

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結論から言うと、あれだけクソダサいと酷評した「J-クラシック」路線は、売上を伸ばすためには間違っていなかったのかも、と認めざるを得ない結果であった。

1.Amadeus Electric Quartet - Carmen (Habanera):視聴回数1096万回

2.Wedding String Quartet - Canon in D (Best Version) :Johann Pachelbel):視聴回数370万回

3.Pachelbel - Canon - Stringspace String Quartet:視聴回数322万回

4.Snow (Hey Oh)-The Vitamin String Quartet:視聴回数233万回 ※Red Hot Chili Peppersのカバー

5.Vitamin String Quartet - Don't Stop Believing:視聴回数214万回 ※Journeyのカバー

6.Creep - Radiohead (Cello + Piano + String Quartet Cover) - Brooklyn Duo feat. Escher Quartet:視聴回数212万回

7.Vitamin String Quartet- Sweet Child O' Mine (Guns N Roses):視聴回数154万回

8.Oh Land - Lean (Live with String Quartet):視聴回数142万回

9.Bohemian Rhapsody - String + Piano Cover - Brooklyn Duo ft. Dover Quartet:視聴回数139万回

10.Haydn 's Masterpiece-Emporor's Hymn,from String Quartet in C:視聴回数134万回

TOP10のうち、ロックのカバーが5曲と半分を占めた。The Vitamin String Quartetが3曲。ここが最強。次にBrooklyn Duo関係が2曲。デンマークのOh Land(ナナ・オーランド・ファブリシャス)は唯一のオリジナルだが、これもロックに入れると6曲となる。

1位のAmadeus Electric Quartetの「カルメン」のカバーも、キーボードとチェロはエレキを使っているし、ノリはロックだ。

残る3曲のうち、結婚式によく使われるPachelbelのCanonが2曲、Haydn(ドイツ国歌)はオーソドックスなクラシック音楽だが、内容としてはシリアスなものではなくBGM、「実用音楽」と言っていいだろう。

要するに、YouTubeにおいて弦楽四重奏の視聴回数の多いものは、ロックのカバーもしくはクラシックのアレンジものが10曲中7曲を占めていて、残る3曲はクラシックの実用音楽。現代音楽を含めクラシック音楽と呼べるものは、下記のように順位がだいぶ下がってしまう。

25.Karlheinz Stockhausen "Helicopter String Quartet":視聴回数94万回 ※シュトックハウゼンの「ヘリコプター弦楽四重奏曲」という現代音楽の迷曲

27.Shostakovich String Quartet No. 8 in C Minor (II):視聴回数92万回 ※前回、候補にいれたショスタコーヴィチ。勘は悪くなかった。

こんな単純なカウントだけでは「調査」とはいえないが、音楽のマーケットを考える限り、「J-クラシック」路線は一大市場として存在すると認めざるを得ない。

ただ、「ボヘミアン・ラプソディ」の編曲は、クロノス・カルテットの「パープル・ヘイズ」のようなよさもあった。引き続き調査して鉱脈を見つけたい。